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やまつり 空 和紙工房 日本暦研究所 のブログ


by yui-yayoi

年代対照について~ユダヤ暦、グレゴリオ暦、旧暦

ユダヤ暦の上では現在年末であり、そろそろ新年を迎える。

 ユダヤ暦は日本の旧暦と同様に陰暦(太陰太陽暦)だ。日本の旧暦は天体本位でありその運動に完璧に沿っている一種の天文暦だが、ユダヤ暦は法則性を尊重した太陰太陽暦だ。日本の旧暦と同様に原則として新月を一ヶ月の始まりと捉えるが、一ヶ月の日数や閏月が入るタイミングなどは規則的になるように決まっている。だから、実際の天象とは幾分ずれるだろうと予想される。

 さて、ユダヤ暦の新年は本によるとたいてい新暦(グレゴリオ暦)の9月から10月頃と説明されている。日本の旧暦ならば正確な天文データさえ揃えば簡単に月日が割り出せるが、なにぶんユダヤ暦に関する情報は国内では少ないので、任意のユダヤ暦日付を計算する方法が分からない。そこで、インターネットで「イスラエル 新年」を検索してみた。そうしたら、次の新年は「2009.9.15」ということが分かった。この日は(時差の問題もあるが)日本の旧暦では七月二十七日。新月は2009.9.19(3:44日本標準時)であり、新月に対して4日も先行していることに驚いた。ユダヤ暦と天象とのずれはこのくらい当たり前なのかもしれない。ともかく、ユダヤ暦ではこの日をもって、天地創造の創世紀元5770年を迎える。

 日本の旧暦も他の暦でもそうだが、年という周期の区切りをどこに付けるかということには、民族文化による恣意性が伴う。農耕のサイクルを基礎にする東アジアの旧暦は立春に近い新月の日であるが、天地創造を基準にするユダヤ暦では“ティシュリ”という月であり、この月は季節としては中秋。だから、異なる暦どうしの年代を対照させる場合には便宜上、「平成21年:西紀2009年:ユダヤ暦の創世紀元5769年」みたいになるが、それぞれの暦の年数が変わる変わり目のところに注意しながら対照していく必要がある。旧暦と新暦の対照の場合にそうであるように。

 「西紀2009年はユダヤ暦の創世紀元5769/5770年」という風に、またがる二つの年代を併記すると間違いは少なくなるように思われる。
 よく話題になる赤穂浪士討ち入りの日付も同様で、元禄15年(1702)は西紀1702年ではなくて、西紀1702/1703年とするほうが良い。なぜなら、討ち入りの日付(十二月十四日)などはまさに元禄15年(1702)といっても西紀の方は年を越して新暦換算で1703年1月30日だからだ。ついでにもっと厳密なことを言うと、この時代の日本の時刻制度では夜明けまで同じ日付で呼んだから旧暦と新暦の日付の対応は「十二月十四日:1月30/31日」である。そして、討ち入りの時刻は十四日の子の刻(0:00a.m.)を過ぎていたから厳密には1月31日の未明ということになる。

 赤穂浪士討ち入りの日付を新暦(グレゴリオ暦)に対照させる上の例でも分かるように、厳密な日付対照をさせていこうとすると、年の変わり目、月の変わり目、日の変わり目が暦法・時法ごとに違うことに注意が必要だ。


 さて、‘5770’にはどのような意味があるのやら。宿題。
by yui-yayoi | 2009-09-12 23:12